生産技術に配属って言われたけど何するの?
生産技術はモノづくりをする製造業にとって非常に重要な部署です。
製造業が発展するかどうかは生産技術の能力次第と言っても過言ではありません。
それにも関わらずその実態は世間ではあまり知られてはいません。
私は大企業の工場で10年以上働いています。
生産技術歴は8年以上で、2年ほどは保全の仕事をやっていました。
今回はこれから生産技術に配属される人や興味ある人に向けて、生産技術とは何か詳しく解説していきます。
生産技術とは|モノづくりに必要不可欠な技術
生産技術とは、製品を効率的かつ高品質で大量に生産するための技術や方法のことです。
モノづくりをする企業にとって、製品をより早く・安く・高品質で・安定して作ることが日々の重要な課題となります。
製品を作るための最適な設備、配置、材料、人員などすべてが生産技術そのものなのです。
モノづくりに必要不可欠な技術というわけですね。
私たちの身の回りのものを思い浮かべてください。
スマホ、車、食品、服などこれらすべては生産技術あってこそ作り出されています。
生産技術が進化すれば、よりよい製品が私たちのもとに届き、暮らしが快適になるということです。
生産技術者の5つの仕事内容
生産技術者の仕事はときに「何でも屋」と言われるほど多岐にわたります。
また企業によってつくるものも違えば工場の規模も変わるので、仕事内容も異なります。
ここでは生産技術として働く私の会社の主な仕事内容を5つ紹介します。
- 新規設備の導入
- 既存設備の改善や自動化
- 新しい生産技術の開発
- 老朽化設備の更新
- 設備の安全対策
難しい言葉ばかりなので一つずつくわしく解説しますね。
新規設備の導入
「新しい製品を作りたい」「今の製品を改良したい」となったら、新しく生産ラインを作ったりすでにある生産ラインを改造したりしなければなりません。
生産技術者は原料から製品になるまでに必要な加工・組立・検査の方法などを考えて設備全体を設計します。
ほかにも設備が建物に収まるよう最適な配置を考えたり、必要な人員を決めたり、メンテナンス方法や安全対策も考えます。
そうして設計した設備を実際に制作、現場へ設置して安定稼働させるところまでが生産技術者の仕事です。
やらなければならないことがたくさんありますね。
既存設備の改善や自動化
生産技術者は新しい設備の導入ばかりではありません。
むしろほとんどの企業が新規設備の導入なんて数年に1回あるかないかではないでしょうか。
生産技術者の大半はすでに工場で稼働している設備の改善を行うことになります。
- もう少し早く作れるようにしてほしい
- もっとこの部分は精度をよくしてほしい
- 人でやってる検査は自動化してほしい
- この部分の形状だけを少し変えたい
- など
こんな要望が日々現場や営業から挙がってきます。
古い工場になるほど設備改善の課題は山積みです。
生産技術者はこれらの課題に日々対応しなければなりません。
ほんと古い工場は昔ながらの生産方法なので生産技術者は大変です…
その分成果が表れやすいのでやりがいはありますけどね。
新しい生産技術の開発
今ある製品を作るための生産技術がすべて正しいとは限りません。
市場には新しい技術が次々と出されています。
新しい技術を導入してより効率的で高品質な製品が作れないか検討するのも生産技術者の仕事です。
色んなソフトを使ってシミュレーションするときもあれば、ミニチュアサイズの試験機を作って実験することもあります。
うまくいけば大規模の設備を導入します。
地道な検討ですが最新技術に触れることもできるので楽しいですよ
老朽化設備の更新
歴史の長い工場には古い設備がたくさんあります。
サビがひどかったりガタガタしていたり、クラックが入っていたり、いつ壊れてもおかしくないような設備も…。
生産技術者はこれら老朽化した設備を新しく更新するのも仕事の一つです。
一方で工場には古い設備はたくさんありますし使えるお金も限られています。
すべてまるっと更新するのか、一部だけ更新するのか。
設備の重要度や予算とのバランスを考えて方針を決めるのも生産技術者の仕事です。
設備の安全対策
工場では多くの機械と人が動いています。
また工程によっては空調あって涼しいところもあれば、何もなくて猛烈に暑いところも。
工場勤務は3K(きつい・きたない・きけん)と言われるように労働災害の恐れがあり、実際に全国の工場で毎年のように発生しています。
熱中症のような環境要因もあれば、設備に挟まれたり巻き込まれたりする災害もあります。
工場ではHHK(ヒヤリ・ハット・気がかり)といって危ない箇所をピックアップする活動もしているほどです。
生産技術者は労働災害を防ぐために、環境も含めて設備の安全対策を行わなければなりません。
安全対策も古い工場になるほど、お金をかけて全体的に改善しなければなりません。
近年では熱中症対策でファンをつけたりクーラーをつけたり様々な取り組みをしていますね。
生産技術者の5つの日常業務
生産技術者の仕事は多岐にわたり単純作業ではありません。
主な日常業務は以下の5つとなります。
- CAD(図面描き)
- 会議・打合せ
- 資料作成(稟議書や注文書)
- 工事管理
- トラブル対応
一方で日によってやることが変わります。
ここでは生産技術者の代表的な1日を3パターン紹介しますね。
生産技術者の1日|パターン①平穏なとき
まずは平穏なときの生産技術の1日です。
- 07:30 出社(メールチェック)
- 08:00 ラジオ体操
- 08:05 朝礼
- 08:30 メールチェック
- 09:00 社内打合せ
- 10:00 休憩
- 10:20 資料作成(稟議書・会議資料・CAD図面など)
- 12:00 昼休憩(昼食・スマホいじいじ・昼寝)
- 13:00 掃除(週に3回)
- 13:10 資料作成(稟議書・会議資料・CAD図面など)
- 15:00 休憩
- 15:20 現場巡回
- 16:30 資料作成(稟議書・会議資料・CAD図面など)
- 17:30 退社
私の会社では8:00~17:00が定時でフレックスタイム制となっています。
車通勤で混む時間帯を避けるためと、朝一が一番集中できるので早めに出社してメールチェックから始めます。
8:00になるとどこの工場もおなじみのラジオ体操が始まります。
平穏な時はほとんどデスクワークで資料作成に時間をかけていますね。
集中力が切れたら現場巡回をして体を動かすといった感じですね。
平穏な1日ですが9割くらいはこのパターンの1日が多いですね。
生産技術者の1日|パターン②工事管理があるとき
続いては工事管理があるときの生産技術者の1日です。
- 07:30 出社(メールチェック)
- 08:00 ラジオ体操
- 08:05 現場で朝礼(工事書類諸々のチェック)
- 08:30 工事開始
- 10:00 休憩
- 10:30 工事再開
- 12:00 昼休憩(昼食・スマホいじいじ・昼寝)
- 13:00 工事再開
- 15:00 休憩
- 15:30 工事再開
- 17:00 工事終了
- 17:30 退社
生産技術者は設備を新設したり改造したりするために、施工業者に注文を出して工事を行ってもらいます。
工事当日は工事管理者として施工業者が安全に作業しているか、設計通り工事ができているかなどをチェックしなければなりません。
そのため工事中はほぼつきっきりの状態になります。
とは言いながらもどうでもいいときは事務所に戻って机上作業しますけどね…笑
始業前と終結は必ず現場でチェックするので、夏場で長期間の工事になると結構大変です。
また現場で問題があったときはすぐに駆け付けて解決しなければなりません。
デスクワークに集中していても急に電話がかかってきて集中力が切れるのはあるあるですね!
生産技術者の1日|パターン③トラブル対応のとき
最後はトラブル対応のときの生産技術者の1日です。
- 07:30 出社(メールチェック)
- 08:00 ラジオ体操
- 08:05 朝礼
- 08:30 トラブル発生・トラブル対応
- 12:00 昼休憩(昼食・スマホいじいじ・昼寝)
- 13:00 トラブル対応
- 17:00 トラブル解決
- 17:30 退社
基本的には工場でトラブルがあると解決するまで事務所に帰りません。
さすがに昼休憩はしますが。
またここではトラブルが発生から解決するまで定時内で済んでいますが、夜中にトラブルが発生することもよくあります。
その場合は朝までコースですね(笑)
3交代で24時間稼働の工場なんかは大変ですね。
ちなみに工場には保全部隊もいて、大きなトラブルなんかは保全部隊に修理を依頼します。
カンタンな修理だと生産技術者が直します。
生産技術者に向いてる人
生産技術者の仕事内容を説明してきましたが、どんな人が生産技術者に向いてるのか3つ紹介します。
- モノづくりが好きな人
- コミュニケーション能力が高い人
- 改善が好きな人
モノづくりが好きな人
モノづくりが好きな人は生産技術者に向いています。
というかモノづくりが好きじゃないと生産技術者として続きません。
実際に設計したものが実物になると想像以上の達成感があります。
最新の技術を知ったら、工場の設備に展開できないか考えるのも楽しい仕事です。
モノづくりが好きな人は、誰かに指示されるまでもなく自ら主体性もって楽しみながら仕事に取り組めるはずです。
コミュニケーション能力が高い人
生産技術者のほとんどは工場勤務です。
工場には中卒から大卒まで学歴はさまざまで10代から60代まで幅広い年齢層となっています。
優秀な人材は豊富にいますが、中には「頭おかしいんじゃないの?」と思う人も…
生産技術者として仕事を進めていくためには、工場にいるすべての人と接しなければなりません。
オペレーターや職長といった製造部門だけでなく、購買や経理部門、経営層とまで連携して調整する必要があります。
つまりいろんな人を味方につけなければ仕事が進みません。
逆に言えば誰とでも仲良くやれる人や先輩から可愛がられるタイプの人は生産技術に向いています。
コミュニケーション能力が高ければ、たとえ技術力が不足していても生産技術者としてうまくやっていけるでしょう。
改善が好きな人
生産技術者の仕事は工場を常に改善していくことです。
- 現場の問題を見つけて迅速に解決策を見つけ出し提案する。
- いまの状態に満足することなく、常により良い方法を探求する。
- データを分析して数値に基づいて効果を提示する。
これらのことが好きでやれる人は生産技術者に向いています。
また改善は生産ラインや設備だけでなく、机上で行う業務も同じです。
稟議書や注文書、工事書類の様式を見直して使いやすくしたり、紙で回覧していた書類を電子化したり。
生産技術者に限らずですが、常に改善を目指して仕事ができる人はどこの企業でも優秀な人材として評価されるはずです。
生産技術者に必要なスキルと知識
生産技術者で活躍するためには必要なスキルと知識があります。
すべて身につけたらあなたも優秀な生産技術者の仲間入り!
生産技術者に必要な5つのスキル
生産技術者として活躍するには次の5つのスキルが必要です。
- パソコンスキル(OfficeやCAD)
- 問題解決能力
- コミュニケーション能力
- 行動力
- プレゼンスキル
生産技術者の仕事はデスクワークはメインなのでパソコンスキルは必須です。
OfficeやCADソフトの基本的な操作、ショートカットキーを使いこなすなど、パソコンスキルがないと仕事が遅くなります。
また生産技術者としては、とくに「行動力]や「プレゼンスキル」は欠かせません。
アイデアを出したり計算したりが多いですが、実際には試してみないとわからないことだらけです。
「思いついたらやってみる」精神で行動力ある人じゃないと生産技術者として活躍できません。
また生産技術者の仕事は設備の複雑で難しい仕様を素人にもわかりやすく伝えることでもあります。
プレゼンスキルがないと誰にも理解してもらえません。
どんなに良い改善提案でもプレゼンスキルのせいで予算も取れずお蔵入りになることさえも…。
生産技術者に必要な3つの知識
生産技術者には主に次の3つの知識が必要です。
- 機械と電気の基礎知識
- 法律の知識
- 工場の生産技術
すべての設備は機械と電気で動いています。
これらの基礎知識がないと設備の設計はできません。
また新しく設備を導入するときは法律が絡む可能性もあります。
建物から建設する場合は「建築基準法」や「消防法」、騒音や振動が出る設備なら「騒音規制法」「振動規制法」などです。
工場の設備をいじったり新設の際は常に法律も気にしなければならないのも生産技術者の宿命ですね。
そしてやはり重要なのは自社製品の生産技術です。
工場で働く生産技術者である以上、自社の生産技術は必須の知識です。
これを知っているからこそ、改善箇所も見えてきますからね。
生産技術者に役立つ資格
生産技術者になるために必要な資格というのはありません。
資格なんて取らなくても先ほど挙げたスキルや知識を習得すれば優秀な生産技術者になれます。
ただ工場勤務の生産技術者であれば、持っていると将来のためになる資格はあるので5つ紹介します。
- 機械保全技能士
- エネルギー管理士
- 電気主任技術者
- 公害防止管理者
- 高圧ガス製造保安責任者
どの資格も難易度は高いですが、取得できれば昇給や出世への道が開かれます。
ただ社内出世はもちろんですが市場価値も高いので、転職を考えている人はこれらの資格を持っているだけで相当有利になります。
まとめ|生産技術は製造業の中核部門
生産技術とは何か、生産技術者の仕事内容や向いてる人、必要なスキルなどを解説しました。
生産技術者の仕事は多岐にわたり覚えることも幅広く本当に大変です。
ですが生産技術のあり方次第で企業経営も変わるほど重要な部門です。
これを見て生産技術に興味を持った人はぜひ挑戦してみてください。